彼女に宣言したとおり、私は今薫さんと家族になる努力をしようとしている最中だ。
少しずつだけど彼女と会話をし、彼女と接する機会を作るようにし、お互いに歩み寄りつつある私と彼女の間には多分以前ほどの確執はない。
だけど……
だからと言って彼女を「おかあさん」と呼ぶことにはまだ気恥ずかしさと抵抗がある。
でも、パパと結婚する彼女のことを「中谷さん」と呼ぶのもおかしいから、「薫さん」と呼んでいる。
これでも、私の中ではだいぶ進歩しているのに……
無言で顔をそらすと、真宏がクスリと笑ってベンチに置いた私の左手を指を絡めて握った。
「祐吾さんも、幸せそうでよかったな」
「うん……」
私は真宏の横顔を見つめると、左手に重ねられた彼の右手にそっと指を絡める。
「俺もいつか、あんな風に永遠を誓えればいいな」
「何?高校生のくせに、パパ達に触発されちゃったんだ」
からかうように言うと、真宏はむっとした顔で私を見つめる。