「そわ、行くぞ」
そう言って奏葉を病院の庭へと連れ出したものの、俺はその先どうすればいいかわからず戸惑っていた。
祐吾さんが俺と奏葉のために気を遣ってくれたのはわかっていたけれど、彼女の手を引いて歩いたまま、どこまで行けばいいのか、何を話せばいいのかわからない。
本当は、病院に来るつもりなんてなかった。
奏葉を目の前で事故に遭わせてしまった俺は、彼女を守れなかったことにずっと罪悪感を感じ続けていて。
彼女がどうしているか、彼女の身体が大丈夫なのか、そればかりが気になって仕方ないのに、彼女と顔を合わせるのが怖かった。
奏葉のことが好きで、奏葉のことが大切なのに、俺はいつも肝心なところで彼女を傷つけてばかりだ。
そんなことを考えながら歩いているうちに、俺たちは病院の庭の真ん中まで来てしまった。
晴れた日の午後。
入院患者やその家族達が庭でおしゃべりをしたり、ベンチに腰掛けて日光浴をしたりしている。
そんな人達の間を奏葉の手を引いて歩き続けていると、彼女の方から俺の背中に声を掛けてきた。