あの女のほうを振り向くと、彼女は私を見つめて目を潤ませながら肩を震わせていた。
「奏葉ちゃん……私のこと母親だと、そう思ってくれるの……?」
母親……か。
彼女の言葉に、私はすぐには頷けなかった。
やっぱり今でも、私の『お母さん』はママだから。
でも……
「あなたと家族になる努力はしようと思う」
少し考えてからそう告げると、あの女は手の平で顔を覆って床に泣き崩れてしまった。
泣き崩れた彼女の肩をささえ、父が寄り添う。
そんなに泣かなくても……
私はただ、家族閉じてほんの少し彼女に歩み寄ってもいいかなと思っただけで、母親と認めると伝えたわけじゃない。
私はなかなか泣き止まない新しい父の奥さんを見つめて、苦笑いした。
やっぱりこの人は、どうしようもないくらいお人よしだ……
パパに支えながら泣き続けるを見て、春陽も泣き笑いを浮かべる。
それからしばらく泣き続けたあの女は、ようやく涙が枯れると父と共に立ち上がった。
父は彼女を支えて立ち上がると、私に優しく微笑みかける。