玄関を出た私は、ふらふらと歩きながら近所のファミレスへと向かった。
日曜の夜だから、今日は家族連れで混んでいるかもしれない。
ぼんやりとそんなことを考える。
あの女がうちに来て、あの女がうちのごはんを作るようになったとき、私は家で家族と一緒にごはんを食べるのを辞めた。
学校があるときは、昼は購買で買って食べ、夜は外で適当に食べて帰る。
学校が休みの日は、一人で近所のファミレスに行く。
あの女の顔を見ながら、あの女の作った料理を食べたくない。
でも、ただ一度だけ。
あの女が初めてうちに来た日、私は父や春陽と一緒に彼女の作った料理を食べた。
誰に聞いたのか、その日のメニューはハンバーグだった。
それはママがよく作ってくれたメニューで、私が大好きなもの。
ママはハンバーグを作ると、いつもケチャップで何か絵を描いて私達に出してくれていた。
ママの作るハンバーグはとてもおいしかった。
その日あの女が作ったハンバーグも、綺麗なお皿においしそうに盛り付けられていた。
ハンバーグにのっていたのは、ケチャップではなくて手作りらしい変わった味のソース。
ちょっとしたレストランのハンバーグみたいだった。