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取り組んでいた課題から顔を上げると、いつの間にか窓の外が暗くなっていた。

私は立ち上がると、財布とスマホを持って部屋を出た。
                   
部屋を出ると、階下から父や春陽、それからあの女の笑い声が聞こえる。

その中に今日はもう一つ、新しい声が混ざっていた。


ため息をつきながら、スマホで時間を確かめる。

18時30分を少し過ぎたところだった。


私は階段を降りると、真っ直ぐに玄関へと向かった。

玄関で靴を履いていると、後ろからあの女の声がする。


「あ、奏葉ちゃん。どこ行くの?もうすぐごはんが……」

彼女の声を無視して出て行こうとすると、リビングから出てきた父が私の腕を掴んだ。
             
  
「奏葉!どこへ行く気だ?」 

振り返ると、父が厳しい表情で私をじっと見ていた。


「今日は真宏くんが来てるんだ。夕飯はちゃんと家で食べなさい」


真宏?


父とあの女の向こうには、春陽とそれからさっき見たあの男が立っていた。

男の赤っぽい茶髪を見て、私はある一つのことに思い当たる。


「そっか。あいつが」

「奏葉?」

小さな声でぼやいた私を見て、父が怪訝そうな顔をする。