病室に入ってきた医師は私を診察すると、経過や状態を説明するために父とあの女を別室に誘導した。
病室にふたりきりになると、涙を拭きながら鼻を啜っていた春陽がベッドの脇に近づいてきた。
「お姉ちゃん、ごめんね……」
「どうして春陽が謝るの?」
「あたし、お姉ちゃんにひどいことたくさん言ったから。お姉ちゃんと一緒にいたくないとか、そういうこと。だからお姉ちゃん……」
うつむきながら話す春陽がだんだん涙声になる。
「もういいよ。気にしてない」
肩を震わせてまた泣き出す春陽を見上げて苦く笑う。
それを聞いた春陽が涙で濡れたままの顔をあげた。
「ごめんね……」
もう一度謝られて小さく首を振る。
春陽だけが悪いわけじゃない。
いつか春陽が私に言い放った言葉。
その全てが本音ではないにしても、そういう感情を抱かせてしまったのは私だから。