「お姉ちゃん……良かった」

ぼろぼろと涙を流しながら何度もつぶやく春陽の横で、父に負けないくらい目を真っ赤に腫らしたあの女が春陽の言葉に何度も頷いている。

それを見た私は、呆れて笑いたくなった。


何てお人よしなんだろう……

父と抱き合う私を見て安堵したように泣き続けるあの女に、心の中で毒づく。

これまで私に散々ひどいことを言われて幾度となく傷ついてきたはずなのに、血の繋がらない娘のためにこんなにも心配して涙を流すことができるなんて。

もし私があの女の立場だったら、事故に遭った継娘のためにきっとこんな風に心から泣いたりできない。

私は目を真っ赤に腫らしたあの女を父の肩越しに見つめて、小さくため息をついた。


それからしばらくして、病室に医師と看護師が入ってきた。

私を囲んですすり泣いていた父がシャツの袖で涙を拭い、あの女と春陽もそれぞれ鞄からティッシュを取り出す。