「パパ……?」
「目を覚ましてくれてよかった……」
父が弱々しい声でつぶやく。
抱きしめる父の腕は、大きくて温かくて……
小さな頃と変わらず、優しく私の全てを包んでくれた。
あの女と対立する私をいつも厳しく叱っていた父。
家に帰らず家族とも食事を摂ろうとしない私に、何も言わなかった父。
だけど、そんな父が心の底では私を愛し、心配してくれたことをその腕の温かさが教えてくれる。
こんなことになるまでそのことに気づかなかった。
私に厳しく接する父の、本当の心の内を知ろうともしなかった。
私は今まで、父にどれだけひどいことを言ってきただろう。
「パパ。ごめんなさい……」
私は父の胸に額を押し付けると、心の底からそう言った。
父の腕にしばらく抱きしめられたあと顔を上げると、父の後ろに春陽とあの女が立っていた。