「信じられないなら、信じてもらえるようになるまで何度でも伝えてやるよ。俺はそわのことが好きだ」


俺の想いが奏葉に届くか分からないけれど。

その言葉に渾身の想いを込めた。

奏葉は俺の腕の中で俯き、しばらく何も言わなかった。


「そわ……?」

名前を呼ぶと、ようやく彼女がゆっくりと顔をあげる。

そして、何故か泣きそうな顔をして俺を睨んだ。


「信じないって言ってるんだから、そんな優しい言葉をかけないで」

奏葉の声が掠れて震える。


「そわ?」

俺が手の平で奏葉の髪に触れようとすると、彼女はその隙をついて俺の身体を思いきり押しのけた。

強い力で押された反動で、俺は二、三歩後ずさる。

俺から逃れた奏葉が、大きな通りの方へ勢いよく駆け出していく。