「今夜もママの星は見えないね。私が嫌な子だから、嫌気がさしちゃったのかな」

奏葉が灰色の雲が広がる空に哀しげにつぶやいた。

それからしばらく、何の答えも返してはくれない空を見つめたあと、手の平で顔を拭って俺の方を振り返る。


振り返った奏葉の目に涙はなかった。

けれど、ときどき聞こえる鼻を啜る小さな音が、さっきまで彼女が目に涙を浮かべていたであろうことを教えてくれる。


「あんたにも嫌な態度ばっかりとってごめん。星のキーホルダーを見つけてくれたことは感謝してたのに……ずっと、嫌なやつだったよね」

奏葉がほんの少し俺に微笑みかける。


「だけどもう顔を合わすことはないと思うから。パパや春陽をよろしく。それから、茉那も……」

そう言うと、奏葉は俺の手をゆっくりと振りほどいた。


顔を合わすことはないって……


「何だよ、それ?」

低い声でつぶやくと、俺は振りほどかれた奏葉の手をもう一度掴んだ。