手の平が強くシーツを握り、そこにくっきりと大きな皺を作る。
「ママ、ごめんね。ママの部屋、守れなかった……」
うつぶせになったままつぶやく。
悔しくてやるせなくて、私は強く唇を噛んだ。
「あれ、ドア開いてる。閉めてあったんだけどなぁ」
部屋の外から春陽の声が聞こえる。
それに気づいた次の瞬間、春陽の大きな声が耳に響いた。
「お姉ちゃん!何してんの?」
声、うるさい。
私はゆっくりと振り返ると、春陽を睨んだ。
「私は認めてないって言ったでしょ?ここはママの部屋よ」
「お姉ちゃん!」
春陽が困惑した表情で私を見つめる。
彼女の横には、赤っぽい茶髪の長身の男が立っていた。
その茶色の髪に、どこか見覚えがあるような気がする。
この男があの女の親戚。
そう考えるだけで、その男を見る目に憎しみがこもった。