リビングでは祐吾さんが項垂れてソファに腰掛けていた。

その隣に座ったカオルさんが、何も言わずただ慰めるように祐吾さんの肩に手を置いている。


俺は……

奏葉が駆け上がって行った二階に行く勇気がなく、食卓に腰を掛けて肘を付き、手の平を組んでいた。

奏葉が自分の部屋に閉じこもってからしばらくの間二階から物音が聞こえていたけれど、今は静かになっていた。


奏葉の様子を見に行った春陽が彼女と話をしているのかもしれない。

二階を気にしながらもリビングでカオルさん達と沈黙を保っていると、突然誰かが階段を駆け下りてくる音がした。


「お姉ちゃん?」

春陽の声が聞こえ、俺は祐吾さんやカオルさんと共に立ち上がる。


リビングのドアから廊下を覗くと、階段を駆け下りてきているのは奏葉だった。

手に大きなボストンバッグを抱えた彼女は、勢いよく階段を駆け下りてきたかと思うとはじき出されるように玄関から飛び出した。


「そわ!?」

玄関のドアが閉る瞬間、彼女の名前を呼ぶ。