「あたし、パパに言ったんだ。お姉ちゃんにもパパとおかあさんが籍入れてないことを伝えた方がいいって。そうしたらパパ、こう言ったの。『籍を入れていないとしても、パパは再婚相手としておかあさんを連れてきたんだ。だから、籍を入れていないことを伝えても、奏葉にとってはただの言い訳にしか聞こえないよ』って。だから、あたし知ってて黙ってたの」

春陽が上目遣いで窺うように私を見上げる。


「お姉ちゃん、ごめんね……」


だから、出て行くことはよく考え直してほしい――

春陽の目は私にそう訴えかけていた。


春陽の目をじっと見つめ返すと、私の腕をつかむ彼女の手をそっと引き剥がす。

春陽を見つめたまま、ゆっくりと静かに首を横に振る。


「そんなこと、今さら聞きたくない」

籍を入れてないから、あの女のほうがそれを断ったから……

だから何だって言うんだ。

私達のためだなんて、そんなの今さらただの偽善の言葉にしか聞こえない。