「意地張るのやめなよ。お姉ちゃん、本当は大学行きたいんじゃないの?」
廊下へと歩き出した私の背中に、春陽が問いかける。
歩を止めると、春陽が私の背中に真剣な声で訴えてきた。
「あたし知ってるよ?高校に入ったお姉ちゃんがいつも遅くまで勉強してたこと。それって大学に行きたかったからだよね?」
春陽に背を向けたまま、私は口元に皮肉っぽい笑みを浮かべる。
「何それ。私のこと厄介に思ってたんじゃないの?」
そう返すと、春陽は数秒黙ってから反論をしてきた。
「それは……また別の話だよ」
「都合がいいね」
鼻で笑いながらそう言うと、春陽はまた沈黙した。
「いいじゃない、春陽。私が出て行けば、留学から帰ってきたあんたは誰にも気を遣わずに、パパとあの女と三人で楽しく暮らせるでしょ?」
私は振り返ると、黙って佇んでいる春陽に意地悪く笑ってみせた。