「奏葉。待ちなさい」
無言で二階の部屋へと上がろうとした奏葉の腕を、祐吾さんが強い力で掴む。
「離して」
奏葉が祐吾さんの手を振り払おうと激しく腕を振る。
けれど振り払うことができず、奏葉は反抗的な目つきで祐吾さんを睨んだ。
「何なの!?」
「話があるんだ」
「私は話すことなんてない」
祐吾さんをきつく睨みながら、奏葉が強い口調でそう言い放つ。
祐吾さんはしばらくじっと奏葉を見つめたあと、いつになく低い声で彼女に言った。
「そうか。三時間ほど前、お前の担任の先生からお前の進路のことで電話があった。パパはそのことで話がしたいんだが」
祐吾さんの言葉を聞いた奏葉も、彼のことをじっと見つめ返す。
奏葉はしばらく祐吾さんを見つめたあと、感情のこもらない声で言った。