電話で奏葉のクラス担任と話している祐吾さんは、話を聞きながら何度も相槌を打ち、時折「ご迷惑をお掛けしてすみません」と謝罪の言葉を言っていた。
祐吾さんと奏葉の担任との会話は十分程度続き、
「本人が戻りましたら、よく話をしてみます。はい。しつれいします」
という祐吾さんの言葉で切れた。
電話を終えた祐吾さんは、普段では見たことのないような厳しい顔をして食卓に座ると、食べかけだった夕食を無言で口に運び始めた。
祐吾さん同様に、夕食を食べかけだった俺達も食事を再開する。
食事を再開した俺達はただ無言で箸を口に運ぶばかりで、誰一人口を利かなかった。
夕食が終わり三時間が過ぎた頃、ようやく玄関の扉が開き、奏葉が帰ってきた。
玄関で奏葉の帰りを待っていた祐吾さんが腕組みをして立ち上がる。
奏葉は厳しい表情で仁王立ちになっている祐吾さんをちらっとだけ見上げると、靴を脱いでその傍をすっと通り過ぎようとした。