★★★
カオルさんが作った夕食をちょうど食べ始めたとき、リビングに電話の音が鳴り響いた。
箸を置い立ち上がりかけた祐吾さんを手の平で制して、カオルさんが電話に出る。
「はい、月島です。はい……はい……」
よそ行きの声で電話口に立ったカオルさんの声のトーンが、少しずつ下がっていく。
祐吾さんが声のトーンと共に曇っていくカオルさんの表情を、箸を置いたままじっと見つめる。
カオルさんの様子がおかしいことに気付いた俺は、隣に座る春陽と顔を合わせた。
「変な勧誘かな?」
眉根を寄せて小さな声でささやく春陽に、俺は肩を竦めながら首を傾げる。
「いえ……はい。まだ本人は帰宅していなくて……主人に換わります……」
カオルさんはそう言うと、受話器を手の平で押さえながら祐吾さんを振り返った。