放課後、拓馬と廊下を歩いていると進路指導室から出てくる奏葉が見えた。


「あ、奏葉ちゃん」

拓馬がつぶやくようにそう言ったとき、俺達の方を振り向いた奏葉と目が合った。


呼び止めようか……

そう思い言葉を選んでいる間に、奏葉は俺から視線をそらして立ち去ってしまう。


「タイミング逃したな」

俺の隣で、拓馬が余計なことを言う。

拓馬に言い返そうと口を開いたとき、奏葉のクラスの担任が疲弊した顔付きで進路指導室から出てきた。

奏葉に何か問題でもあったんだろうか。


「さようならー」

気にしながら、通りすがりに彼に挨拶をする。

すると、奏葉のクラスの担任が何かを思いついたように俺を見た。


「高野。お前、月島とは親戚で今同じ家に住んでるんだよな?」

「親戚?あぁ……はい」

俺の母親がカオルさんの姉だから、名目上はそうなるのか……


「そわが何か……?」

首を傾げると、奏葉のクラス担任が神妙な面持ちで眉を顰めた。