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「月島。ちょっといいか?」
進路希望調査を提出した翌日の放課後、帰る準備を整えた私に担任が声をかけてきた。
「はい」
担任に呼び止めたられた理由がすぐにピンと来た私は、内心ドキリとしながらも平静な顔で返事をした。
担任は私を進路指導室に連れて行くと、神妙な面持ちで私の進路希望調査用紙を目の前に出してきた。
「これ、どういうことだ?」
眉を寄せて尋ねてくる担任に、私は抑揚のない声で答えた。
「どうと言われても。そういうことです」
担任が差し出した進路希望調査の用紙には、よく見慣れた文字が愛想なく羅列されている。
【進学の希望】
なし
【個人面談希望日程】
なし
「お前、大学行かないつもりか?」
「はい」
担任の質問に、短くそう答える。
「それ、本気で言ってるのか?」
「はい」
「親御さんと話は……?」
「いいんです」
頑なな態度を取る私に、担任が困惑した様子で小さくため息をついた。