でも、私は――……
「ごめんなさい。委員長の気持ちは嬉しいけど、今は誰かと付き合うとかそういうことは考えられない……」
私がそう告げると、蒔田は一瞬傷ついた表情を浮かべたあと柔らかい笑顔を見せた。
「そっか……」
微笑む蒔田の目が哀しそうに揺れていることに気付き、彼の顔を見ていられなくなった私は視線を落とす。
「ごめんね……」
小さな声で謝る私に、蒔田は優しい言葉をかける。
「いいよ、気にしないで。これからもクラスメイトとしてよろしく」
蒔田の優しい声に、俯いたまま頷く。
結局そのあと私は、最後まで蒔田の顔を見上げることができなかった。
蒔田と教室で別れた私は、複雑な想いを抱えたまま職員室へと足を運んだ。
「失礼します」
職員室の入り口から担任教師の背中を探し出すと、進路希望調査を手に真っ直ぐに進んで行く。
「あぁ、月島か」
担任教師は、私に気付くと忙しそうに作業をしながら顔だけを上げた。