「資料は見た。でも……せっかくだけど、あの大学には行かないと思う」

「どうして?」


「レベルが高すぎて、今の私の実力では到底届かないし……」

私は目を伏せると、小さな声でそう言い訳をした。

そんな私を励ますように、蒔田が明るい声をかけてくる。


「そんなことないよ。まだ受験までに一年以上あるし、今から諦めるのはまだ早いんじゃないかな?月島さん、成績は悪いほうじゃでしょ?」

「そう、だけど」

上履きの先をじっと見つめる。


夏休み、星空の下で夢を応援してくれた蒔田に、大学に行くのをやめるとは言いづらかった。

上履きの先を睨みながら、私は頭に浮かんだ別の言い訳を口にする。


「家族に相談したら、あの大学は家から遠すぎるって反対されて……あと、天文学以外に他の学部にも最近興味が出てきたっていうか……家から近いところでもうちょっと考えてみようと思って」

「そうなんだ」