シャーペンを動かす手を一瞬止める。

しばらくその質問を見つめたあと、迷いのないくっきりとした文字でそこに回答を記入した。


進路希望調査を握り締めて教室を出ると、ドアでバッタリと蒔田に会った。


「委員長……」

驚いて目を見開くと、蒔田が柔らかい表情で笑った。


「今帰り?俺、ちょっと忘れ物しちゃって」

蒔田はそう言うと、私の手元に視線を向けた。


「それ、進路希望?」

「え。あぁ、うん……」

蒔田に問われ、言葉を濁らせる。


「そう言えば、この前渡した大学の資料見た?レベルは高いけど、天文学を勉強できる大学らしいよ」

「うん……」


以前蒔田から天文学を学べる大学のパンフレットを貰ったことを思い出す。

今握りしめている進路希望調査で蒔田の厚意を無にしようとしている私は、どう反応すればいいかわからず彼から視線を反らした。


「月島さん?」

私の態度を変に思ったのか、蒔田が小さく首を傾げた。