「家から通えるところにしようかなぁと思ってるけど、正直どこの大学がいいとかまだわからないよ。大学も奏葉と一緒に行けたらいいのに」

甘えるような茉那の言葉に答えるように、私は曖昧に唇に笑みを浮かべた。


進路希望――……

私は確かに迷っている。

でもそれは、茉那の言うようにどこの大学に行きたいかはっきり決められていないからではない。

行きたい大学もやりたい分野も、私には明確だった。

だけど、今の状況でその希望をこのまま推し進めていいものか悩んでいる。


そしてそのことを悩んでいる最大の理由は、春陽だった。

春陽はまだ中学生だ。

来年からアメリカに留学を決めている彼女だったが、その期間はひとまず一年。

留学から帰ってきた後は、パパやあの女のいる家で日々を過ごす。


私の存在を嫌って留学に行く決意をした春陽だ。

帰ってきてから私のいるあの家で生活することは彼女にとって苦痛だろう。


だから私は、高校を卒業したあとは家を出て一人で生活することを考え始めていた。