「真宏。お前、急に何なんだよ」
真面目に進路希望調査に取り組む俺の頭上から、拓馬のあきれ返った声が落ちてくる。
「えっと、志望大学は……」
俺がはぐらかすと、拓馬はため息をついた。
とりあえず知っている大学名を記入しながら、ふと手を止める。
来年の春から、俺達は受験生になる。
受験が終わる頃には両親がアメリカから帰ってくるから、俺はカオルさんの家を出て行くだろう。
まだ少し先のことだけれど、奏葉は俺がカオルさんの家を出たたそのあと、あの家でうまくやっていけるんだろうか……
何かの隙間に思い出すのは奏葉のことばかりで、俺はそんな自分に苦笑いした。