「つうか、夏休みに押し倒したって何だよ?」
ようやく咳き込むのをやめた拓馬が、口許ににやりと不敵な笑みを浮かべる。
「押し倒したって言うか……」
俺は顔を赤くしながら拓馬から視線を反らすと、低い声で小さくぼやいた。
「ただキスしただけだよ」
そのときベッドに奏葉のことを押し付けたし、途中で春陽が部屋に入ってこなければそのまま暴走して何してたかわかんないけど……
そこのところは拓馬には言わなかった。
顔を赤くしている俺を見て、拓馬が楽しそうににやにやと笑う。
「真宏。ちゃんとやることやってるんじゃん。このまま頑張れ」
にやにやと笑いながら、拓馬が微妙なエールを送ってくる。
「うっせぇ」
俺は恥ずかしさを誤魔化すために机の中にしまってある進路希望調査を取り出すと、それに記入を始めた。