「個人面談の前の事前調査だろ?あとで変えたっていいんだし、とりあえず模試で結果の良かった大学名書いとけば?」
「だよなぁ」
拓馬は頷くと、手にした進路希望調査票をくしゃっと適当に机の中にしまった。
「個人面談のとき親も同席するって担任が言ってたじゃん?真宏の場合はどうすんの?両親共に海外だろ」
「あぁ、多分そのためだけに帰ってくるわけにはいかないだろうから……とりあえずカオルさんに代理で来てもらうと思う」
「そっか」
奏葉はどうするんだろう……
拓馬が振ってきた個人面談の話題で、ふと彼女のことを想う。
カオルさんとの関係は元々よくないが、最近の奏葉は祐吾さんともまともに顔を合わせていない。
俺が奏葉に想いを告げたその日から、彼女はまた夕飯のときに一人でどこかに消えるようになっていた。
奏葉がそうなったのは、俺が原因なのかもしれない。
ちょっと前までの俺なら、追いかけて連れ戻しに行ったと思う。