部屋には小さな勉強机と洋服箪笥が一つ。

それから小さな本棚。

部屋に入って右側に窓があり、そのすぐ下にベッドがあった。

部屋の片隅に俺の荷物が入ったダンボールがいくつか積まれているけれど、それ意外は綺麗に掃除されている。


だがその部屋に入った瞬間、一つだけあった違和感に俺は眉を顰めた。


「お姉ちゃん!何してんの?」

俺と同じようにその違和感に気付いた春陽が、大きな声をあげる。


窓の下にあるベッド。

そこには、俺と同じ年くらいの女が一人うつぶせになって寝転んでいた。


春陽の声に、その女が顔を上げて俺達の方を振り返る。

セミロングの癖のある髪に、やたらと細くて長い手足。

俺達を睨むように見つめる、ほんの少し吊りあがった大きな目。


なぜかその顔にどこか見覚えがあるような気がして記憶の中を探るが、すぐには思い浮かばない。


「私は認めてないって言ったでしょ?ここはママの部屋よ」

その女が低い声で春陽に言った。


「お姉ちゃん!」

春陽が困惑した声でその女を呼ぶ。