周りの雑音から逃れたくて耳を塞ぐ。

目を閉じる。

そこは、真っ暗な闇だった。


まるで夜空みたいだ。

導く星のない、真っ暗な闇夜。

俺はその闇夜をあてもなく彷徨う。


「真宏!」

名前を呼ばれて目を開けると、拓馬が立っていた。

俺は暗い闇夜から、現実の世界に引き戻される。


「これ、書いた?明後日までに提出だってさ」

拓馬が俺の前でA4サイズのプリントをひらひらとちらつかせる。

そのプリントに印字されているのは、『進路希望調査』の文字だった。


「夏休みが終わってまだ一ヶ月なのに、もう大学決めろとか早くない?」

拓馬が手にした進路希望調査の紙を見つめてぶつくさと文句を言う。


「いや、普通だろ。一応ここ、進学校だし。俺らもう高二だし」

そう答えると、拓馬は不服そうに眉をしかめた。


「真宏は決まってんの?大学。俺、正直第一志望をどこにすればいいかよくわかんないよ。やりたいこととか?まだよくわかんねぇし……」

「俺も決まってない。けど、とりあえず理系かな」

俺の言葉に拓馬が頷く。