好きじゃない――……

僅かに感じる胸の痛みを掻き消すように、心の中で何度もその言葉を繰り返す。


何度も繰り返しながら、私を好きだと言った真宏のことを想った。

それから、彼を好きだと言った春陽を……

そして、今目の前で哀しそうな目をしている茉那を想う。


私が真宏を好きになるはずがない。

私は最後に胸に強く焼き付けるように、その言葉を心の中で唱えた。


だって真宏は、春陽をそして茉那を……

私が大切にしている関係を、崩してしまいそうになるのだから。


まるで、あの女みたいに――……


だから私は、絶対に真宏を好きじゃない。

私はパパの隣で穏やかに微笑むあの女を思い出して、きゅっと唇を噛み締めた。