「あたし、奏葉に嘘ついた……」

「茉那?」

茉那が哀しそうな目で私を見つめる。


「真宏と付き合ってるって言う話、あれ嘘なんだ。キスも……告白した勢いであたしから無理やりしたの」

「茉那が?」

私は驚いて目を瞠る。


茉那から真宏と付き合うことになったと聞いたときは衝撃を受けたけれど、今彼女の口から聞く告白の方がさらに衝撃的だった。


「あたし、奏葉に嫉妬したんだ。あたしの方がずっと真宏のこと見てたのに、どうして?って……だからつい、あんな嘘ついちゃった」

茉那はそう言うと、ふふっと笑った。

その笑い声が渇いて響く。

口許に必死で笑みを浮かべようとする茉那の目は哀しそうで、少しも笑ってなどいなかった。


「昨日真宏がうちまで来てね、もう一度はっきり言われたよ。『茉那の気持ちには応えられない』って」

唇に笑みを浮かべて泣き出しそうになるのを必死で堪えている茉那を見て、胸が痛んだ。