自分から人のことを無視しておいて、今度は何だって言うんだろう……
私はほんの少し苛立ちながら、それでも立ち上がった。
茉那は私の前を歩くと、人通りの少ない中庭へと私を導いた。
中庭で私と向き合った茉那が、随分と長い間俯いて黙りこくったあと、ようやく何かを決意したように顔を上げる。
「奏葉、今朝は無視したりしてごめん……」
「え、あぁ」
茉那に潤んだ瞳で謝られて、私は何も言えなくなる。
小さく頭をさげて謝る茉那は本当に申し訳なさそうな顔をしていて、今朝の自分の態度を本気で悔いているようだった。
「無視するつもりじゃなかったんだけど……顔を合わせたときどうすればいいのかわからなくて……」
茉那が顔を赤く染めながら語気を弱める。
「聞いたんでしょ?真宏から……」
「聞いたって?」