私――……

私がずっと春陽のことを苦しめていた――?


ただ呆然とする私を見て、春陽が小さく鼻で笑う。


「話はそれだけだから」

春陽は冷たくそう言うと、私の部屋から出て行った。

ドアが閉まる瞬間、背筋にすっと悪寒が走る。

おそらく初めて目にする春陽の冷たい瞳が、彼女が去ったあとも私をその場へ縛り付けていた。


あの女のことを親しげに『おかあさん』と呼び懐いている春陽。

そうしながらも、心の底ではまだちゃんとママのことを想っているのだと思っていた。


でも、それは全て私の思い違い。

あの女がこの家に来てからの二年間。

家族から煩わしく思われていたのは彼女ではなく私だったんだ。


正直言って、そのことに全く気付いていないわけではなかった。

だけど私は信じたかった。


見た目にどれだけあの女を大切に扱っても心の底では、パパも春陽もママのことをちゃんと想っていると――……