「あたし、どうしてこんなにお姉ちゃんに振り回されてるんだろうってすごく思った。お姉ちゃんはいつだって相手の気持ちなんて全部無視で自分勝手に行動してて……それなのに、どうしてあたしばっかり我慢して、気を遣わなきゃいけないんだろうって」

「春陽……」


「うちの学校、一年間の交換留学の制度があって、中学に入学したときから留学自体には興味があったの。でも、たった一年でもあたしがいなくなったらパパやおかあさんがかわいそうだと思ったから、その興味は心の中にとどめとこうと思ってた。だけど、もう限界」

春陽が私を睨むように見つめる。


「あたし、お姉ちゃんがいるこの家から今すぐ抜け出したいよ」

私は何も言えなかった。


春陽がずっとそんな風に思っていたなんて……


無言で凍りつく私に、春陽がとどめの言葉を刺す。


「うちを壊してるのはおかあさんじゃない。いつだって、お姉ちゃんだよ」

「……」

ズキリ、と刃物で突き刺されるような衝撃が胸に走った。