何の話なのだろう。
そう思って待っていると、春陽が思ってもみなかったことを口にした。
「お姉ちゃん。あたし、アメリカに留学することにした」
春陽の言葉が、私の部屋の中でやけに冷たく響く。
「え……?」
突然のことに、反応が少し遅れる。
アメリカに留学って、どうして――?
呆然とする私を見て、春陽が口角を持ち上げて皮肉っぽく笑った。
「お姉ちゃん、あたし、もうこれ以上お姉ちゃんに振り回されたくないんだ」
「春陽?」
「お姉ちゃん。あたしがこれまでずっと我慢してきたことに気付いてないでしょ?パパとおかあさんに対するお姉ちゃんの態度のせいで、あたしがどれだけ気を遣ってきたと思う?」
そう言って私を見つめる春陽の目は、いつになく冷たかった。
「あたしはパパとおかあさんとお姉ちゃんと……家族が調和できるように気を遣ってきたつもりだった。お姉ちゃんがどれだけそれを崩しても。だけど、まぁ君のことがあって……」
春陽が一度口を閉ざし、噛み締めるように唇を舐める。