俺が無言で奏葉を見つめ返すと、彼女は視線を反らして呆れたように息をついた。
「それはどうかな……」
奏葉は低い声でつぶやくと、彼女の身体を抱きしめていた俺の腕を解いた。
俺の腕から解放されて自由になった奏葉は、俺から数歩離れると口角をあげてにやりと皮肉っぽく笑った。
「あんたは今まで何人の人を好きになった?あの女に、東堂若菜……」
奏葉はそう言って俺を見上げながら、指折り数える。
「あとはよく知らないけど……これまで好きだと思ってた人達のこと、諦めたり、心変わりしたりしてきたんでしょ?」
奏葉が目で同意を求めてきたけれど、俺はそれに対して返事をすることも首を動かすこともしなかった。
俺が黙って奏葉を見つめていると、彼女が頬を緩めふっと一瞬だけ淋しそうに笑った。
「私はその中に入りたいとは思わない。永遠じゃないなら、“好き”はいらない」