好きな人に。

胸が痛くなるくらい大切に想う人に。

世界で一番嫌いだ、とそう思われ続けるのは辛かった。



しばらく奏葉を抱きしめていると、彼女が俺の腕の中で何かつぶやいた。


「……れる……?」

「え?」

奏葉の言葉が聞き取れなくて、問い返す。

すると、彼女は腕の中で俺の顔を見上げるようにした。


そして、さっき俺が聞き取れなかった言葉をもう一度繰り返す。


「あんたは、私を永遠に好きでいられる?」

「え……?」

俺が一瞬戸惑った表情を浮かべると、奏葉は俺を見上げて小さく鼻で笑った。


「ほら、答えられないでしょう?」

どこか冷めた声で彼女が言う。


「私には信じられないのよ。あんた達が簡単に口にする“好き”って言葉」


「どうして……?」

「だって、好きなんて気持ちは簡単に変わってしまうでしょ?パパがママを忘れてあの女を好きになったように。目の前からいなくなれば、好きだった人の存在を簡単に消してしまえる」


奏葉は冷めた目で俺を見上げながら、哀しそうな声で言った。