「そわ……?」
呆然としたまま何も言わない奏葉に呼びかけると、彼女が微かに唇を震わせた。
「嘘……」
奏葉の唇から掠れた声が漏れる。
「嘘じゃない。そりゃ、初めは愛想のない嫌な女だと思ってたよ。だけどそわのこと見てるうちに、だんだんほっとけないって思うようになって……気付いたときにはすごく好きになってた」
俺の言葉に、奏葉が大きく目を瞠る。
彼女の目は、それでも信じられないと俺に強く訴えていた。
「好き」だと言葉にすると、そこから一気に溢れ出てくる感情を押し留めることができなくて、堪らず奏葉を自分の胸に引き寄せる。
どうすればこの想いをもっとうまく伝えられるのかわからない。
数人の人が行きかう歩道の真ん中で、彼女の華奢な身体をぎゅっと抱きしめる。
行きかう人の視線を感じたけれど、今の俺には目の前にいる奏葉だけが大切で、それ以外はどうだって良かった。
「なぁ、そわ。俺のこと好きになれよ」
奏葉を抱きしめた俺の口から、切実な想いが漏れる。