「そわ」
名前を呼ぶと、奏葉の瞳が静かに揺れる。
俺は右手を伸ばすと、奏葉の左頬に手の平でそっと触れた。
俺の手の平が頬に触れた瞬間、奏葉の肩が小さく震える。
「そわ」
俺はもう一度、愛しいその名前を呼んだ。
「お前が世界で一番嫌ってる俺の言うことなんて信じられないかもしれないけど、それでも聞けよ」
奏葉の目を真っ直ぐに見つめる。
潤んだ瞳で俺を睨む奏葉を見つめながら、今この瞬間に俺は決意を固めた。
奏葉に想いを伝える。
鼓動が次第に速くなり、唇が乾く。
唇を少し舐め、息を一つ飲み込むと俺はゆっくりと口を開いた。
「俺は茉那とは付き合ってない。そわが俺を嫌いでも、俺はお前のことが好きだ」
想いを告げた俺の鼓動は、ますます速くなる。
俺の告白を聞いた奏葉はどんな反応をするだろう。
拒絶されるのを覚悟しながら、彼女の反応を待つ。
だが彼女は、睨むのをやめてただ呆然とした表情で俺を見上げるだけだった。