学校を出て歩き出してからも、奏葉は隣に並ぶ俺を無言でじっと見つめてきた。
彼女から睨まれたり視線をそらされることはあっても、こんな風に見つめられたことは今まで一度もない。
奏葉に向けている方の俺の横顔が自然と火照り始める。
チラリと奏葉を横目で見ると、彼女と目が合った。
目が合っても、奏葉は俺から視線を反らさない。
「あの……俺、なんかついてる?」
思いきって尋ねてみると、奏葉は黙って俺を見つめながらゆるゆると首を振った。
「じゃぁ、何?」
奏葉はそのあとも穴が開きそうなほどじっと俺を見つめ続け、それからようやく口を開いた。
「茉那はどうしたの?」
「は?」
奏葉の言っている意味がわからず、眉を寄せる。
「茉那と一緒に帰ったんじゃないの?」
茉那と……?
奏葉の問いかけの意味を理解しかねていると、彼女がふっと笑って冷たい目で俺を見た。
「とぼけないでいいよ。付き合ってるんでしょ?茉那と」
奏葉の言葉に、大きく目を瞠る。