急いで追いかけると、下駄箱で靴を履き替えている奏葉に追いついた。


「そわ!」

声を掛けると、彼女がゆっくりと振り返ってきょろきょろと辺りを見回す。


「そわ!」

近づいてもう一度名前を呼ぶと、俺に気づいた奏葉の焦点が定まった。

俺を見た奏葉は、驚いているような怒っているような何だか複雑な表情をしていた。


「一緒に帰ろう」

奏葉に誘いかけて、下駄箱から靴を取る。

靴に足の先を突っ込んで履き慣らすためにつま先を地面に軽く打ちつけていると、頭のてっぺんに妙な視線を感じた。

怪訝に思って顔を上げると、奏葉が俺のことを不思議そうな顔をしてじっと見つめていた。


「何?」

小さく首を傾げると、奏葉が首を横に振る。

そうしながらも、奏葉はまだ不思議そうに俺を見ていた。


「帰るだろ?」

俺がもう一度奏葉に尋ねると、彼女は少しの間を置いてから小さく頷いた。