「そういえばさ、最近あんまり茉那のこと見ないよな」
茉那に告白されてから数日経った放課後。
拓馬が俺を見て言った。
拓馬の口から出た茉那の名前に、少しばかり冷たい汗をかく。
茉那の告白を断ってから、俺は一度も彼女と顔を合わせていなかった。
ときどき俺達の教室に顔を見せていた茉那が、ここ数日は一度も現れない。
きっと俺のことを避けて、なるべく会わないようにしているんだろう。
「何かあったのかなぁ。でも奏葉ちゃんが同じクラスだから、大丈夫だよな」
拓馬がぼやくように言う。
茉那から告白されたことを拓馬に話していない俺は、愛想笑いでそのボヤキを受け流す。
いつか話したほうがいいだろうな。
そう思っていると、突然拓馬が大きな声を出した。
「あ!」
拓馬が廊下の方を指差しながら、にやりと笑って俺を振り返る。