そういえば、夏休みの終わり頃から私と真宏はほとんど口をきいていない。
もともとそんなに話はしないけれど、夏休みの終わりに真宏にキスされてからは特にそうだった。
家にいるときは四六時中春陽が真宏にべったりとくっついているし、学校に行くときは私が彼を避けていた。
真宏を避けていたのは、彼にされたキスのことがあってなんとなく気まずかったから。
だけど――……
私はドアの傍に立っている真宏を見つめた。
視線が自然と彼の唇へと移っていく。
それと同時に、真宏の唇の柔らかくて熱い温度を思い出す。
私の唇が触れたそれは、同じように茉那の唇にも触れたのだ。
そう思うと、何故か胸の奥が疼いた。
真宏は茉那と付き合いだした。
付き合ったその日にキスしたということは、真宏も茉那のことが好きだったということだろう。
だったら、あの日真宏が私にしたキスは何の気まぐれ――?