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家に帰った私は、スクールバッグを置くと制服のままでベッドに腰をおろした。
茉那の話を聞いてから、胸のざわつきが治まらない。
私は一体どうしてしまったんだろう。
しばらくベッドに腰掛けたままぼんやりとしていると、部屋のドアをノックする音がした。
反応せずにいると、ドアの向こうから声が聞こえてくる。
「そわ。メシできたって」
それは真宏の声で、私は反射的にビクリと身体を震わせた。
「そわ?帰ってんだろ?」
もう一度真宏の声がして、今度はドアノブがカチャリと小さく音をたてた。
「いるなら無視すんなよ」
ドアの隙間から顔を覗かせた真宏が、私を見て不機嫌な顔になる。
「ごめん……」
小さな声で謝ると、真宏が意外そうに私を見つめた。
しばらく私を見つめていた真宏が、不意にふっと頬を緩める。
「なんか、同じ家の中にいるのにそわの声聞いたのひさしぶりかも」
そう言った真宏はとても優しい目をしていた。