「キス、したんだ?」

「うん……突然だったからビックリしちゃった。キスしたらお互いに離れるのが淋しくなっちゃって。そのあと二人で別の場所に移動したんだけど、それから真宏と……」

茉那はそれ以上は話せないというように首を振ると、口ごもって俯いた。


それから……何があったのだろう。

キス以上のこと……?


途切れた言葉の続きを頭が勝手に想像し始める。

私は茉那がそれ以上話さないでくれてよかったと思った。

聞かなければ、想像の範囲内にいくらでも留めておけるから。


それでも、茉那の話を聞いた私の心はざわつくばかりだった。

いつも通りの平静さを装って彼女の前に立っているのがやっとで、心の内は少しも穏やかじゃない。


考えてみると、昨日の真宏はいつもより帰りが遅かった。

それはずっと茉那と一緒にいたからだったのか。