「辛い恋ならやめればいいじゃない」

茉那が顔を真っ赤にしながら必死に訴えかけてくる。


「真宏。あたしじゃダメかな……?」

潤んだ目で俺を見上げる茉那の声は、微かに震えていた。


きっとものすごく緊張して、ものすごく勇気を出したんだと思う。

茉那にこんな顔で告白されたら、他の男は絶対放っとかないだろう。


だけど、俺は……


俺は手を伸ばすと、茉那の頭を軽く撫でた。


「俺、茉那のことは大事に思ってる」

俺がそう言うと、茉那の瞳がほっとしたように大きく揺れた。

だけどその瞳を見つめながら、俺は茉那に残酷な言葉を告げる。


「でも、ごめん。茉那の気持ちには答えられない。俺は……」


その先は言葉にできなかった。

茉那の表情に暗い影が落ちるのが目に見えてわかったから。


泣き出しそうな茉那の顔を見ていると、胸が痛む。


でも俺は、奏葉のことが好きだ。


一方的で報われない。

バカみたいに滑稽な想いだってわかってる。

それでも、この想いだけはどうしても曲げられない。