俺は奏葉が憎んでいるカオルさんの親戚で、彼女の大切な母親の部屋を使っている居候で……
その上無理やりキスまでしてしまって……
そんな俺のことを、奏葉がよく思ってるはずがない。
むしろ嫌われてる。
実際何度も「大嫌い」だと奏葉に言われてるっけ。
それなのに、俺は奏葉のことが好きなんて。
すげぇ笑える……
バカみたいに滑稽だ。
「なぁ、茉那。自分を嫌ってる人を好きになったことってある?」
缶ジュースをベンチに置きながらつぶやく、茉那が大きく目を見開いて俺を見上げた。
「真宏?」
「すごく好きな相手が自分のことは嫌ってて、しかも別の誰かを好きかもしれない。そういう場合、どうすればいいんだろうな……」
茉那に答えを求めたかったわけじゃない。
ただ俺は、そうぼやかずにはいられなかった。
俺を見上げていた茉那が、缶ジュースをベンチに置いて睫毛を伏せた。
そして、俯いたまま地面をじっと見つめてる。
しばらくして俺は、茉那の俯いた横顔が泣き出しそうなくらい悲しげなことに気がついた。