「さっきまで?」

俺が怪訝そうな顔をすると、蒔田がくすっと声をたてて笑った。

その笑い声が人をバカにしているようで、俺を苛立たせる。


「でもついさっき帰ったよ。月島さんに急ぎの用でも?」

蒔田に問われ、俺は口を閉ざす。


帰ったのか。

蒔田の口からそれを聞いて、俺は少しほっとしていた。


「じゃぁ、行っていいかな?職員室に寄って帰らないといけないから」

蒔田がそう言って、俺にどこかの教室の鍵を見せる。

俺が黙っていると、蒔田は軽く頭をさげて俺の横を通り過ぎた。


「ちょっと待てよ!」

通り過ぎていく蒔田を横目に見ながら、ふと思い立ったことがあって蒔田を呼び止めた。


「何?」

呼び止められた蒔田が、訝しげな顔で振り返る。

俺はごくりと唾を飲み込むと、思いきって蒔田に尋ねた。