「高野くん、だよね?こないだはどうも」


蒔田は俺の方に歩み寄ってくると、やけに爽やかな笑顔を見せた。

俺が敵意をこめた眼差しで見つめると、蒔田が困ったように肩を竦める。


「高野くんて、いつもそんな怖い顔で人のこと見るの?それとも、この前月島さんを夕飯の時間まで引っ張りまわしたことをまだ怒ってるのかな?」

無言で睨む俺に対して、蒔田は穏やかで紳士的な口調で話しかけてくる。


「もしそうだったら謝るけど……」

「そんなことは別にどうだっていいんだよ」

俺はしばらく蒔田を睨むように見つめたあと、ぶっきらぼうな声で言った。


「そわは?」

「月島さん?」

蒔田が俺を見て、小さく首を傾げる。


「一緒にいたんだろ?」

「あぁ……」

俺が尋ねると、蒔田は口角を上げて意味あり気に笑った。


「一緒にいたよ。ついさっきまでね」


蒔田がどこか余裕のある声で答える。