特別な用事……？

『デートだったりして』

拓馬の声が耳にリアルに甦ってきて、俺は思いきり顔をしかめた。


「真宏？」

しかめ面の俺を見て、茉那が訝しげに首を傾げる。


「ごめん、茉那。ありがとう」

俺は茉那の肩をぽんと軽く叩くと、再び廊下を歩き出した。

さっき教室を出たところなら、まだその辺にいるはずだ。

俺は奏葉と蒔田が行きそうな場所を必死で探し回った。

だけど結局二人を見つけることができなかった。


二人を探して最後にやって来た職員室の前の廊下でため息をつく。


奏葉は今日も、蒔田と二人でどこかに出かけたんだろうか。

そう思うと、もやもやとした苛立ちが胸に湧き上がってくる。

それを押さえるようにぎゅっと唇を横に引き結んで顔を上げる。


ちょうどそのとき、前から歩いてきた一人の男子生徒と目が合った。

俺に気付いたそいつが、笑って軽く会釈する。

その態度にはえらく余裕があって、なんだか無性にムカついた。

俺の前に現れたのは、奏葉と一緒に教室を出たはずの蒔田だった。