途中で奏葉のクラスの教室を通りかかった俺は、念のため中を覗いてみた。
放課後の教室は人気が少ない。
だけどそこに茉那の姿を見つけた俺は、彼女に声を掛けてみた。
「茉那!」
教室のドアから声を掛けると、俺に気づいた茉那がにっこりと笑って歩み寄ってきた。
「真宏。どうしたの?」
「そわは?」
歩み寄ってきた茉那にそう尋ねると、彼女はどこか哀しそうに、ほんの少しだけ眉尻をさげた。
でも、茉那の表情はすぐに笑顔に戻る。
「奏葉だったらさっきまで教室にいたよ。でも、委員長に呼ばれてどこかに行っちゃった」
「委員長?」
思わず問い返した声が低くなる。
「どこ行ったかわかる?」
「さぁ……でも奏葉はあたしに先に帰ってって言ってたから、何か特別な用事なのかも」
茉那が困ったように首を傾げる。